株式会社内部監査

Ⅰ 信託会社の内部監査事例

今月から当社が行った内部監査について順次紹介していきたいと思います。

 信託会社の内部監査では、信託業務の適正性やコンプライアンス体制の確立が主な監査カテゴリーと監査項目になります。主な監査カテゴリーと監査項目は以下の通りです。

1.ガバナンスと内部管理体制
・取締役会および内部管理部門の役割と機能発揮状況
 経営陣が適切に内部管理体制を整備し、リスク管理を行っているかどうか、について内部管理に関する規程、マニュアル、各種委員会議事録の整備状況と内部管理部門の体制整備状況を確認します。

2.リスク管理体制
 信託会社に関するリスク管理が規程等(監督指針等の法令や社内規程を言います。以下同様。)
・信用リスク管理
 信託財産の運用や信託受益者に関する信用リスクの管理が規程等に基づいて適切に行われているかどうかを確認します。
・市場リスク管理
 金利リスク、株式価格変動リスク、為替リスクなど市場変動による損失を防止するための   リスク管理が規程等に基づいて適切に行われているかどうかを確認します。
・流動性リスク管理
 信託財産の流動性が確保され、受益者が必要な時に信託契約を履行できる状態にあるかどうかを規程等に基づいて確認します。
・オペレーショナル・リスク管理
 業務遂行中のヒューマンエラー、システム障害、内部不正などに対するリスク管理が規程等に基づいて適切に行われているかどうかを確認します。

3.コンプライアンス態勢の整備・運用
・コンプライアンス体制の整備状況
 金融商品取引法、信託法、個人情報保護法やマネー・ローンダリング・テロ資金供与防止に関する監督機関のルールを遵守するための態勢(社内規程等の整備、要員・体制の整備など)が適切に行われているかどうかを確認します。
・コンプライアンスに関する個別リスクへの対応状況
 個人情報保護、反社対応、不祥事件対応、内部通報制度の運用、AML/CFT対応状況、など各社が定めるコンプライアンスに関する社内規程等の実運用に関する証跡の確認とヒアリングを行います。ここが監査でいう「川下」にあたり、不備があれば規程等のルールが原因なのか、周知が図られていなかったのか、対処ができていなかったのか、などの原因を探り、管理部門などの「川上」の対応状況(経営陣の実態把握ができていなければガバナンスの問題となります。)を確認していきます。

4.信託業務の適正な運営
・信託契約の管理
 契約書の管理状況、委任者、受益者に対して約束した内容の履行状況を確認します。
・信託財産の管理
 信託財産が法令等および社内規則、契約に基づき適切に管理されているかどうかを確認します。ここでは受益者に損害を与えるような取引が行われていないかも確認します。
・受益者の利益保護
 受益者の利益が保護され、信託会社の利益が不正に優先されることがないか、最良執行状況、利益相反の有無を主に確認します。

5.システムリスク管理
・システムセキュリティ
 顧客情報や信託財産の管理に関わるシステムが安全かつ効率的に運用されているかどうかを規程等に基づいて確認します。サイバー攻撃や情報漏えいに対する対策の確認も重要です。
・BCP
  災害やシステム障害が発生した場合の事業継続計画が策定され、定期的に見直しや訓練が行われているかどうかを確認します。
6.人材育成、教育指導態勢
・教育・研修体制の整備確立
 業務だけでなく、コンプライアンス、リスク管理を含む教育・研修体制が整備されているかどうか、を確認します。
・業務引継ぎ体制
 小規模企業では特に人材の流動性が高いため、前任者の業務内容だけでなく、個別課題(トラブル対応、監査指摘事項などが特に重要)の引継ぎ体制(引継ぎ書の定型化、上司への報告と報告書式の整備など)が行われているかどうかを確認します。
7.外部委託管理
・業務委託契約の適正性
 法令や社内規則に沿った内容かどうかを確認します。個人情報保護、監査、報告に関する定めがあるかどうかが重要です。
・委託業務の報告と評価
 委託業務の適切に執行状況について委託先から報告を定期的に受けるとともに、委託先の評価と委託契約の見直しが適切に行われているかどうかを確認します。

  以上です。内部監査では各社の業務内容や規模・特性に合わせて監査カテゴリーや監査項目を設定することが重要です。そのためには業法や社内規程等を読み込み、そのうえで経営陣とのリスクアセスメントミーティングを実施して認識を共有化すると経営に付加価値を提供する内部監査になります。その意味ではまずは被監査会社の「ルールベース」監査を志向することが当社の基本的な考え方です。         
                           (2025年9月4日)


   

内部監査の高度化支援、コンサル業務の一層の展開を行っていきます。よろしくお願いします。

 

 

 

 

 

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